「職場の雰囲気」は、仕事のパフォーマンスを維持する上でとても大切です。それを理解していない人が一人でもいる職場には、イヤな空気が漂いやすくなります。
あからさまに不機嫌な態度を取る
自分より立場が低い人に当たる
愚痴・不満・噂話をまき散らす
信頼関係が築けていたり、自分の方が立場が上だったりすれば注意はしやすいですが、そうでない場合は対応に悩みます。
注意するには勇気がいるし、がんばって注意しても理解してもらえないかもしれません。逆恨みされるリスクもあります。どうすれば、効果的な伝え方や改善の提案ができるでしょう?
『言葉のドレスアップ』を実践されているクライアントの事例をご紹介します。
感情的な人の言動を改めるのは難しい
パートタイムで医療機関に勤めているTさんは、職場の人間関係を重視しています。正社員ではありませんが、専門知識は豊富で共感力も高いため、同僚や利用者さんとの関係は良好です。ただ、職場には一人だけ苦手な人がいました。
「お前はそんなこともわからないのか」
「おい、あれどうなってる?」
「俺は知らん。自分で何とかしろ」
数十年にわたってその職場で働いている、シニア世代の医師のNさんです。同僚への言葉遣いが悪く、利用者への態度も横柄です。時には怒鳴ることもあり、みんなが居心地悪そうにしていました。しかし年齢も立場の上のため、注意できる人はほとんどいませんでした。
Tさんとしては、ガマンしてストレスを溜めるくらいなら、どうにか状況を改善したいところです。しかし、そのまま指摘しても通用しないのは目に見えています。
「もう少し優しい言い方はできませんか?」
「その言い方は失礼ですよ」
「昔はそれが普通だったかもしれませんが今は……」
どんなに言い方を工夫しても、伝えたいことは同じです。むしろかえって怒りの矛先を自分に向けられるかもしれません。年齢や立場の低い自分では、Nさんを説得することはできないのか……Tさんは考えました。
(どうにか言動を改めてもらいたいけど、どうやって伝えればいいだろう?)
人は敵対する相手の意見は聞かない。それなら……
Nさんへの対応を考え続けていたある日の夕方、机の上を片付けていると、書類の中から『伝え方の講座(Dress Words Up)』のテキストが出てきました。数ヶ月前に受講し、復習しようと思ってそのままになっていました。思い出してテキストを開いてみると、そこには今の状況のヒントになりそうな内容が書かれていました。
人は「何を言うか」より「誰が言うか」を優先する
相手を「物分かりの悪いヤツ」と見なす関わり方はNG
どんなに強そうに見える人でも、何かしら不安を抱いている
Tさんは改めてテキストを見返すと、状況と関係性を整理しました。
(Nさんの視点で考えてみると……)
年齢が上がるにつれ、自分の居場所がなくなってきたと感じている
時代は変化しているけど、自分は衰えつつある、という自覚はある
以前注意を受けた時は改善が見られたし、上司の前ではおとなしい
状況を俯瞰して見たことで、Tさんは自分が果たすべき役割が見えました。
味方の数は、職場の雰囲気に直結する
翌日、Tさんは出勤すると、気付かれない程度にNさんに意識を向けるようにしました。そして他の人への言動が気になった時は、さりげなく声をかけるようにしました。
「長年がんばってこられた経験があるからこそ、言葉も強くなりがちですよね」
「最近は何気ない一言が誤解を招くこともあるので、気をつけた方がいいですよ」
「あなたの仕事に私も助けられているので、助け合える職場っていいなって思います」
耳の痛いことを伝える指導者ではなく、相手を気遣う理解者として接するようにしました。
意外な反応に最初は戸惑ったNさんでしたが、Tさんに他意がないことがわかると、言葉を返してくれるようになりました。
「……?」
「…………」
「……そうですね。わかりました」
その後、すぐにすべてが改善したわけではありませんが、Nさんは少しずつ態度が柔らかくなってきているそうです。まだまだ無愛想なところはあっても、嫌悪感やストレスを感じることは格段に減りました。Tさんの「職場の雰囲気づくり」は少しずつ進んでいるようです。
正論は正しいが、正論を言う人は正しくない。
『図書館戦争』という小説に、こんな台詞が出てきます。Tさんの事例にも通ずる、人間関係の本質を突いた表現ではないでしょうか。
ヒトの脳は、「左脳が論理的思考、右脳が感情的思考」を司っていると言われています。他者を注意・説得するには、論理的に正しくて50点、感情面まで汲み取って100点ということなのかもしれません。
立場や年齢の前に、誰だって一人の人間。職場の雰囲気を乱す人がいた時は、ぜひこの話を思い出してみてください。お互いを理解し合いながら、良好な人間関係を築いていきましょう。
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